
大河ドラマ「いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」
月1連載インタビュー
"日本で初めてオリンピックに参加した男"金栗四三(中村勘九郎)の幼なじみ・春野スヤを演じているのは、大河ドラマ『八重の桜』(2013年)で主演を務めた綾瀬はるかさんです。スヤが元気に歌う「自転車節」や、四三が上京するときに電車と並走して走るシーンなど、スヤのパワフルでかわいい姿が注目されていますが、綾瀬さんはどんな思いで演じているのでしょうか。撮影エピソードとオリンピックへの思いなどを含め、うかがいました。
――春野スヤさんの印象を教えてください。
「凜とした強さがあり、とても明るく、いつも元気に"自転車節"を歌っている太陽のような女性だと思います。ストックホルムにいる四三さんからの手紙をスヤさんが読むシーンがあるのですが、新聞で結果を知っているにも関わらず、四三さんの気持ちになって元気に読むんですね。そのシーンの台本を読んだときに、スヤさんという方はすごくポジティブで優しい方なのだと思いました。
第2回で四三さんが、海軍兵学校に不合格になってしまったときも、四三さんが落ち込んでいるとわかるのに、"金栗さーん!"と叫んで、ひとりでしゃべっているんです(笑)。とてもパワフルですよね。私も演じていてこれはオーバーだったかなと思うときがあって、"ちょっと元気すぎましたか?"と演出の方に聞いたことがあるのですが、"もっと元気に!"と言われました(笑)」
――実際にスヤさんの娘さんと会ったそうですね。どんなお話をされたのでしょうか。
「スヤさんはどんな方だったのかとお聞きしたら、とにかく世話好きで、なんでもやることが早くて、いつも元気な方だと教えていただきました。今回、大竹しのぶさんが演じていますが、スヤさんのお義母さん・幾江さんにすごく気に入られていたので、娘さんたちは"自分たちのお母さんなのにおばあちゃんに取られていた"と話していました(笑)。"自転車節"もみんなの前でよく歌われていたそうです。いつも家族の中心にいる女性だとわかったので、私もスヤさんに近づけるようにがんばりますとお伝えしました」
―― "自転車節"を歌いながら自転車で走るスヤさんは印象的ですよね。
「"自転車節"は、シーンによって歌い方が違うんですよ。物語最初のころは、元気にひとりで自転車を爆走しながら大声で"会いたかばってん〜♪"と歌っていて、ストックホルムの四三さんをみんなで応援するシーンは、踊りながら歌っているので、ちょっと難しかったです(笑)。でも、基本、はつらつと元気に歌っていますね」
――熊本弁は難しくないですか?
「熊本の方言は親しみがあって、入ってきやすいと思います。でも、イントネーションがフラットな部分が多いので、いいバランスで話すことが難しいですね。私は方言指導の先生にいつも"厳しくチェックしてください"と言っていますが、共演者の皆さんは、普段から"そぎゃんたいね"と、自然に熊本弁を話しているんです。四三さんがよく驚いたときに言う"ばばば"や"ば"というのも、四三さんが言っているとすごくかわいらしく聞こえます。四三さんを演じている(中村)勘九郎さんの熊本弁が現地の方のように馴染んでいたので、撮影に入るたびに私もがんばらないと!と思いました」
――今回、『いだてん』に出演して、オリンピックについて新しい発見はありましたか。
「今は日本がオリンピックに参加することが当たり前のように思いますが、参加するまでに大変な道のりがあり、オリンピックを開催することも難しい時代を経て、現代にオリンピックが継続されていることがわかりました。世界の祭典であり、みんなが仲良く手をつないで、同じところで同じものを競い合うオリンピックは、平和だからこそできることなのだと台本を読んで感じました。『いだてん』に出演し、そんな日本の道のりを知ることができたからこそ、改めて2020年の東京オリンピックがすごく楽しみになりました」
――では、最後にメッセージをお願いします。
「『いだてん』は、登場人物が個性的でおもしろく、信念があって真っ直ぐ生きている人たちばかりです。その方たちがぶつかり合い、オリンピックを断念するなど、いろいろな悲しいこと、つらいことを経験していきます。でも、最終的には登場人物のポジティブさに胸が熱くなって、"自分もがんばらないと!"と思える作品になっていると思います。私としては、真っ直ぐさが似ている四三さんとスヤさんの関係をおもしろく、温かく演じていきたいと思っています」
――……ありがとうございました。