人気戦争アクション『山猫は眠らない』シリーズの新作で、実力派女優の秋元才加がハリウッドデビュー。本作は、1993年にトム・ベレンジャー主演で1作目が制作されて以来、絶大な人気を誇っていて熱狂的なファンから多くの支持を得ている。第8弾となる『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕」(8月14日より全国公開)は、元狙撃兵・トーマス・ベケット(トム・ベレンジャー)の息子である狙撃兵のブランドン・ベケット(チャド・マイケル・コリンズ)が外交官暗殺の容疑をかけられ、CIAと彼の命を狙う者たちから追われてしまうというストーリーが展開。秋元は謎の暗殺者ユキ・ミフネ(通称:レディ・デス)役で出演している。インタビューでは、ハリウッド初挑戦の感想やガンアクションをはじめとする海外での撮影秘話などを語ってもらった。
「“竹”をイメージして、動きから役を作っていきました」
いつか海外の作品に出られたらうれしいなぐらいの思いでしたね。ファンの方たちも私のルーツを知っているから、握手会とかで「いつかハリウッド作品に出られたらいいね」って言ってくださって、その時は「そうだね、ありがとう!」って答えていましたけど、なかなか難しいだろうなと思っていました。私はリアリストなところがあるので「こういうことがしたい!」という夢がないんです。
そうです。積み重ねた先に漠然と考えていたものが叶ったらいいなとは思うんですけど「絶対これになる!」という強い欲はなかったです。
映画好きの友人とかに『山猫は眠らない』という作品に出るかもって言ったら「えっ、ホント?」ってすごく驚いていて。トム・ベレンジャーさんと共演するって話したら「あの『プラトーン』のトム・ベレンジャーさんと?それってすごいよね」って興奮していました(笑)。個人的には海外でのキャリアが全くないのに抜擢してくださったということは一つ大きな自信になったし、何よりも昔から応援してくださった方々の思いというか夢を叶えることが実際にできたっていう驚きと喜びを感じています」
『山猫は眠らない』の新作で日本人キャストを探しているという話を聞いて、ビデオオーディションに参加しました。
女性の殺し屋“レディ・デス”という設定は決まっていて、アクションや英語のセリフのチェックを何回か受けました。アクションも英語も慣れていないし、殺し屋というキャラがどんな感じなのかも手探りだったので、想像しながらやっていたという感じです」
2、3年前に一度英語を頑張ろうと思った時期があったんですけど、なかなか海外との接点がなかったですし、日本での仕事が舞台だけではなく映像作品も増えてきて、ちょっとずつ軌道に乗り始めたところだったんです。だから、海外にあまり目が行かなくなってしまって。毎日、目の前の仕事を頑張る日々でした。今回の役は撮影の3ヵ月前ぐらいに決まったので、そこから英会話教室に通い始めたんです。
ありがとうございます(笑)。発音は昔から良いと言われてはいたんですよね。ただ、言葉に関しては、監督とのコミュニケーションに不安がありました。日本でも演出家の方とお話しをする時に自分が感じているニュアンスを表現することって難しいんです。日本語でもどう説明したらいいのか分からない時があるのに、海外の現場で英語を使ってちゃんと伝わるのかなと。現地の方に通訳をしてもらってやりとりしたんですけど、どうしても通訳の方の主観が入って私に伝わってくるので細かい部分で「あれ、ちょっと違うかも」と感じることがあったんです。そういう部分でのすり合わせも、自分がもっと英語をできたら明確にキャッチできるのにっていう歯がゆい思いをしたので、撮影が終わって日本に帰った後も英語の勉強をするようになりました。
最初はなるべく流暢にしゃべらないといけないのかなって思っていたんですけど、スタッフの方から『ブラックレイン』の時の高倉健さんの英語の発音が一番はっきりしていて、どこの英語圏の人も聞き取りやすかったと教えていただいたんです。確かに他の日本人キャストの方たちは皆さん早くしゃべっているんですけど、高倉健さんの英語はすごくシンプル。だから、ゆっくりかつはっきりとしゃべることを心掛けました。今も英語の勉強をしているので、撮影当時よりはしゃべるペースが早くなっているんですけど、この間試写を見たら劇中の私はものすごくゆっくりしゃべっているんです。でも、初めての海外作品で言葉がちゃんと伝わらなかったら意味がないから、あれで良かったのかなと。
監督がアメコミの漫画家さんということで、随所にそのエッセンスが入っているんです。新しい挑戦をしている作品なんですけど、自分がリアルな人間として作品の中に存在してもいいものなのか。マーベルの世界のような感じのキャラクターとして出ていた方がいいのか。そこは結構悩みました。レディ・デスは目の部分に赤いペイントをしているし……。本物のスナイパーだったら目立つからしないですよね(笑)。あとは日本人ということで忍者、武士、侍のようなイメージがあるんだろうなと。レディ・デスの名字に“ミフネ”って入っているので、監督は日本人の要素が詰まったキャラクターにしたかったのかもしれません。レディ・デスの心情も特に細かく描かれていませんでしたから、どこか謎めいているんです。キャラクターとしてどう見えるか他の登場人物たちとのバランスを意識して、レディ・デスの動きから役を作っていった感じです。
レディ・デスは重心がブレないんです。武道の摺り足じゃないですけど、重心が低くて腰が座っている感じ。決してチャカチャカ動くことがない。主人公のブランドン・ベケットが“動”でレディ・デスは“静”。イメージは「竹」でした。ストーンとそこに立っているけど動かすのが難しいぐらいビクともしない存在。手裏剣っぽい和を取り入れたアクションにも注目してほしいですね。
海外の方は合気道や柔道に魅力を感じていると思うんですけど、頭がブレることなく移動するとか、丹田の力の入れ方といった身のこなしやメンタリティは学んできてよかったなと思いました。今後も海外で仕事をするチャンスがあるとしたら合気道は自分の武器になるかもしれないと思ったので改めて習ってみようかなと考えています。
銃の扱い方を学ぶために実弾でガントレーニングをさせていただきました。最初は小型の拳銃で100発ぐらい。その後は体を伏せた状態でライフル射撃を。あぐらの状態で撃ったこともありました。銃の重さや撃った時の衝撃などを体験することができてよかったです。
映画『アメリカン・スナイパー』やYouTubeで軍隊の動画を見たりして、2km先にいる対象者を撃ち損ねた時のリアクションやスコープの覗き方などをホテルで練習しました。
ハリウッドの俳優さんたちは演劇学校やワークショップに通っている人が多いんです。アクショントレーニングも欠かさずやっているんですよ。だからなのか、今回ご一緒して“訓練”を受けている人たちという印象を受けました。お芝居としてのテクニックを自然に見せることができるんです。トムさんもチャドさんも本番になるとその瞬間から親子の空気感になる。もう圧倒されました。トムさんはセリフがないシーンでもリアクションや表情がとても自然で素敵でしたし、チャドさんは私が緊張していることを察して優しく支えてくださいました。お二人との共演は私にとってものすごく貴重な経験になったと思います。個人的には、監督の思いつきで変更になったファイナルカットを見ていただきたいなと。詳しくお話しすることはできないんですけど、ぜひ劇場でチェックしてください!
©2020 Sony Pictures Worldwide Acquisitions Inc. All Rights Reserved.
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撮影:島村緑/取材・文:小池貴之